泉谷顕縦塾長の地頭力コラム
Japanese Math 「算数」で地頭を鍛える その2
2021/03/16 公開
2021/09/27 update
「中学受験算数」とは?
海外では、「算数」も「数学」も「Mathematics」とひとくくりにされているが、日本では、「算数」と「数学」は区別されている。
さらに厳密に言うと、「算数」と「中学受験算数」は、全く別物である。
一般的に、「算数」は小学校で習うものであり、「数学」は中学校で習うものである。さらに「数学」では、ⅩやYなどの未知数を使って解を導き出すものであると区別されている。
「中学受験算数」は、方程式を使わずに数字と四則演算(+-×÷)だけで難問に挑む。普通の小学校では習わないので、中学受験を経験したことがない場合、東大生でも苦戦する。
「算数」と「和算」を混同される方もいるが、全く別物で、「中学受験算数」には、「特殊算」として「和算」の名残が受け継がれている部分もある。
江戸時代に西洋の数学に匹敵する発達を遂げた「和算」は、西洋の近代化に追いつく為、明治5年の学制により、日本における学校教育での数学として、「洋算」が採用されると、急速に衰退していった。
しかし、「和算」のDNAは、明治時代の受験算術の中に生き残り、現在まで受け継がれている。
「鶴亀算」、「旅人算」、「和差算」、「過不足算」、「差集め算」、「年齢算」、「集合算」、「方陣算」、「順列・組合せ」など、「中学受験算数」で「特殊算」と呼ばれる、四則演算を応用して方程式を使わずに解く数学遊戯的な文章題である。
大正時代になると、進学熱が高まり、受験競争が過熱する。受験算術も高度化し、「植木算」、「仕事算」、「流水算」、「時計算」、「ニュートン算」、「食塩水の濃度」、「定価の割引」など、現在の「中学受験算数」でも頻出の「特殊算」にまとまっていくが、
この頃から、義務教育の「算数」と「中学受験算数」との乖離が始まる。
「算数」や「数学」では使わない領域の脳を鍛える
「中学受験算数」を乗り切って「数学」に取り組んだ子供たちは、「算数」から「数学」に取り組んだ子供たちよりも、「地頭力(じあたまりょく)」に差が出ます。
中学受験の是非は別として、「中学受験算数」に取り組むことで、「地頭力」が磨かれます。この経験の有無が、最難関中学受験の合否を左右したり、入学後の後伸びにつながるなどと言われています。
「地頭力」は、最近では、「とことん考え抜く思考力」や「GRIT(やり抜く力)」などとも呼ばれますが、「地頭力」を磨くためには、幼児期からロジカル・クリティカル・ラテラルな考え方を身につけ、あの手この手で難問に立ち向かうことを楽しむ習慣を身につけることが重要であります。
最難関を目指す中学受験塾では、「中学受験は算数で決まる」と考えられています。実際に東大理科三類(医学部)への合格者を多数輩出する灘中の入試では、算数の試験が2日間にわたって実施されます。
普通の小学校で「算数」しか学んでいない小4、小5ぐらいの子供たちが中学受験塾に通塾すると、最初は「算数」と「中学受験算数」のギャップに苦しみます。
中学受験塾の講師たちは、合格させることが使命ですので、ギャップに苦しむ子供たちには、「5分考えてわからない問題は解答をみて解法を覚えなさい」と指導します。
これは、受験直前の時間が無い小6生にとっては良いアドバイスかもしれませんが、小5までの子供達には、不向きです。幼児期は、目先の点数にとらわれるよりも、とことん考え抜く「地頭力」を磨くべきです。
「地頭力」を育む幼児教育
子供が生まれた時、親は、我が子の健やかな成長を願います。
親の義務は、子供を自立させることです。親は子供よりも長生きできません。親ができることは、我が子が将来、人生の岐路や難題にぶち当たっても、独力で打開できる力を育んであげることです。
プラチナム学習会では、「算数」を切り口に地頭を鍛えています。最後までやり抜く「地頭力」を育む幼児教育は、親が我が子に贈れる最高のプレゼントです。
コンビニのレジで現金支払いをする際に、「お会計901円です」と言われると、ほとんどの方が1000円札で支払おうとしますが、おつりが99円になると小銭で財布が重くなるので、1円を追加して、1001円で支払い、おつりを100円玉の1枚にされる方が多いかと思います。
とっさにこんな計算ができるのは日本人の特性です。このような暗算や概算ができる力が本当の算数力です。こんな時に紙と鉛筆で筆算をしている人はいません。
幼児期から正しい数量感を身につけることが地頭を磨く上で重要です。
たまに小学生で解法パターンを丸暗記して微分積分の問題を自慢げに解いている子供がいますが、
「なんのために微分積分をしているのか?」とか、「解く前に答えのボリュームがイメージできているのか?」などとたずねると、ほとんどのお子さんが機械的に公式にあてはめて解いているだけなので、説明できません。
このような丸暗記やパターン学習を幼児期から勉強だと勘違いしてしまうと、本当の「地頭力」は磨かれません。
幼児期は先取り学習ではなく、幼児期から算数の歴史の順番通りに数量感や算数感覚を身につけていくことで、結果的に小4ぐらいまでに小学校6年間分の算数が終わってしまうのが理想的です。その後は、余裕をもって「特殊算」などを仕上げ、「中学受験算数」を攻略し、「数学」に進ませるのがオススメです。
最難関中学への受験にチャレンジする場合でも、受験塾に通わせるのは、小4の夏期講習ぐらいからで十分です。
それまでは、こどもに「算数」の楽しさを実感させるべきです。幼児期から低学年のうちに「算数」が得意科目になれば、大成功です。
中学受験の結果は自然とついてきます。理科や国語、社会にしても、小4までは、家族で楽しみながら海・山・川などに実際にでかけて、自然の中で様々な実体験を積ませることが最優先です。
小6での伸びに顕著な差が出ます。先ずは、「なぜ?」「どうして?」という子供の「気付き」を大切にし、親子で調べたり、説明しあえる関係を築くことが大切です。
次回以降については、「植木算はなぜ江戸時代には無かったのか?」や「大阪天満宮の算額と福田理軒」、「暗算や概算を大切にし、バーモデルで文章問題を解かせるSingapore Math」などについて探求致します。
お楽しみに!
塾長 泉谷顕縦
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