上席顧問津田克彦先生のブログ
ブログ第5回「伸びる子に育つ家庭」
2021/05/28 公開
2021/10/31 update
プラチナム学習会顧問の津田克彦です。ブログ第5回をお届けします。
新年度がスタートして2か月余りが経った今も、大阪・兵庫・京都に出された緊急事態宣言で、園・学校生活も、なかなか落ち着かない状態が続いています。楽しみにしていたゴールデンウィークも「不要・不急の外出自粛」で、多くの子ども達は、自宅での生活を余儀なくされたことでしょう。緊急事態宣言は6月中旬まで延長され、不規則な園・学校生活はしばらく続きそうです。そんな時だからこそ、家庭での過ごし方が大切になってきます。
今回は、「伸びる子に育つ」というテーマの第2回として「伸びる子に育つ家庭」を、お話していきたいと思います。
子どもにとって家庭とは
(1)家庭教育と学校教育
「子どもの教育(生活習慣や躾等も含む)は学校が担う」という考え方は、明治時代に学校制度が確立されて以来、少しずつ定着してきたものですが、近年その傾向がますます強くなってきているように思われます。しかし、子ども達が育つには「学校教育」と「家庭教育」のバランスが大切です。
「学習」は、学校で指導するのが当然ですし、以前にもお話したように日本の学校では「社会性」を身に着けることが、小学校の教育目標の一つです。ただし、学校は集団の中での生活や考え方を学んでいきます。学校という社会(集団)の中で、伸びていくためには「家庭教育」が基盤にあることが重要なのです。
(2)家庭生活の影響
求められる家庭教育とは、どんなことなのでしょう。「家庭で行う勉強」を「家庭教育」だと考えている保護者の方はおられないと思いますが、小学校に入学すると、わが子の学力が心配で、結果的に「学力の習得」が主な「家庭での教育」になってしまっている家庭が多いのではないでしょうか。もちろん「学力の習得」に力を注ぐことが、間違いだとは言いません。しかし、本来、家庭で身につけなければならないことを無視してしまうことは、結果的に「子どもを伸ばす」ことにならない場合が多いのです。特に幼児期から児童期前半の家庭生活が子どもの人生(生き方)に強く影響を与えると言っても過言ではありません。
(3)家庭教育とは
幼児期から児童期前半に「非認知能力」を育てることが大切であるとお話してきました。「非認知能力」とは、テストの点数やIQなどのように数値化できる能力(認知能力)ではなく、数値で測ることのできない能力を言い、たとえば「頑張る力」「人とうまく関わる力」「感情のコントロールする力」などです。「非認知能力」などという難しい言い方をしなくても、これらの力が学んでいくうえで大切だということはわかっていることです。人間が生涯にわたり「生きていくための力」とも言えます。これらの力をつけていくことが家庭教育の大切な役割の一つです。
(4)非認知能力を育てるには
どのようにして非認知能力は育つのか。子どもにとって、園や学校は社会、すなわち家の外です。大人が考える以上に緊張もするし、気も使っています。家庭(家族)は「いつだって助けてくれる」と感じられる場所であれば「安心感」「信頼感」が育ちます。「自分はありのままでいいんだ」と思えることで「自己肯定感」が育ちます。「褒めてもらえる」ことで、頑張ってみようという「意欲」が育ちます。「最後まで、させてもらえる」ことで「好奇心」が育ちます。それらは、子どもにとって「生きていくための大切な力」なのです。
(5)生きる力を育てる家庭
①お手伝いをさせる
お手伝いは、いろいろな要素を含む実体験です。年齢に応じたお手伝いをさせること、そして継続させること、さらに褒めることで、自信が芽生え、自己肯定感へと繋がります。また、家族の一員であるという自覚と責任感も育ちます。
②相談相手になる
親は幼児期・児童期前半の子どもにとって、一番の相談相手です。拙い話でも最後まで耳を傾ける。さらにポジティブな助言を与えることで、前向きな気持ちを持つ子どもに育ちます。日本の子ども(高校生)が米国や中国の子どもに比べて、圧倒的に自己肯定感が低いと言うアンケート結果が出ているのは、子どもの言動に対する、大人の対応が、良く言えば謙虚、悪く言えばネガティブだからなのかもしれません。
③知的体力をつける
疑問を感じたら、自分で調べ、答えを根気よく見つけようとする知的な態度は、家庭の中に、そのような雰囲気があるかどうかで変わります。例えば、家族に読書の習慣がある家庭では、読書好きな子どもが育ちます。粘り強い知的な体力を育てる家庭環境を作ることが大切です。
④正しい価値観・道徳心を示す
子どもにとって、一番身近な手本が家族です。子どもは、小さいころ見たり聞いたりした親の言動を価値観や道徳心のベースとして育ちます。子どもが成長して、自分で判断することができるようになるまでは、社会的に正しいと思われる価値観や道徳心を示してやることが大切です。特に公私(家の中と外)の区別ができる子に育てることは親(家族)の責務と言えるでしょう。
◆〈つぶやき〉のコーナー◆
「時代と共に変わる物語」
先日、1年生の国語の教科書を見る機会がありました。その中に「おむすびころりん」というお話を見つけました。私が1年生を指導していたころ(もう30年ぐらい前)にも国語の教科書に載っていた懐かしいお話です。お父さん、お母さんの中にも1年生で勉強された方もおられるのではないでしょうか。読み進めていくうちに、お話の終わり方が違うことに気づきました。確か、私が教えていたころの「おむすびころりん」では、「となりのよくばりじいさん」が出てきたように記憶しています。ところが、私が見た教科書では、となりのよくばりおじいさんは出てこなくて、おむすびを穴にころがしたおじいさんが「こづちをもらって帰り、お米や小判がざくざく出てきて、おじいさんとおばあさんは、いつまでも、なかよくたのしく暮らしました。」で終わっています。
以前、図書館の先生に「桃太郎のお話の最後が、鬼を退治するのではなく、鬼と仲良くなる(鬼が反省するので)に変わってきている。」と聞いたことがあります。物語や童話も時代と共に変わっていくようです。これから、孫に昔話などを聞かせるとき、「おじいちゃん、それ違うよ。」と言われるかもしれませんね。
上席顧問 津田克彦
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