上席顧問津田克彦先生のブログ
ブログ第7回「愛ある叱り方」
2021/09/07 公開
2021/10/31 update
プラチナム学習会顧問の津田克彦です。ブログ第7回をお届けします。
夏休みに入ると同時に、大阪に「緊急事態宣言」が出ました。子ども達が楽しみにしていた夏休み、学校では経験できないことができる長い休暇の夏休み、子ども達はどのように過ごしたのでしょう。いつもの夏休みのような「絵日記」が宿題に出されたのでしょうか。子ども達にとって、今年の年齢の夏休みは一度しかありません。どんな形であれ、子ども達が有意義な時間を過ごしたことを願っています。
さて、今回は「伸びる子に育つ」というテーマの第4回目、今回も前回に引き続き「伸びる子に育つための母親の関わり方」をテーマに、お話していきたいと思います。
母親の「愛ある叱り方」は子どもを伸ばす
近年、「叱れない(叱り方がわからない、叱り方が間違っている)母親の増加」と「増長する子どもの我儘」が問題視されています。どうしてなのでしょう。お母さんは、厳しく叱ろうと思っても、社会の目が「虐待」として捉えるのではないか、優しいお母さんの方が子どもにとって「良いお母さん」のように思う(子どもに嫌われたくない、子どもとの関係においてぎくしゃくしたくない)、叱るのにも根気と体力がいるが、仕事もあり、根気も体力も続かない。なかには、お母さん自身が、子どものころから、あまり叱られた経験がないので、叱り方がわからないという、お母さんもおられるかもしれません。
そこで、今回は「叱り方」を取り上げました。
(1)愛ある叱り方
➀どんなときに厳しく叱るのか
子どもに向けての「小言」は叱ることにはなりません。常時、子どもに注意を与えたり、叱るような口調での指示(例えば「ちゃんとしなさい」「早くしなさい」「お兄ちゃん(お姉ちゃん)らしく」など)は、繰り返すことで、子どもは「叱られる」のではなく「文句を言わる」と捉え、そのうちに聞き流すようになります。
命にかかわる危険な行為(道路への飛び出しなど)や、他人への迷惑行為などは、厳しく叱り、その他の行為とメリハリをつけた叱り方が大切です。
最近、私が特に感じるのが、公的な場と私的な場の区別をつけることができない子どもが多いということです。自分がよければ、どこで何をしても良いのではなく、他人を不快と感じさせるような行為は公的な場では慎む気持ちを、大人になるまでに育てておきたいものです。
②叱るタイミングは「その時、その場で」
叱るタイミングは、その行為を行った、その時、その場で叱ることが重要です。子どもの場合、後になって、「あの時のあの行為は」と叱っても、ほとんど忘れています。忘れていることを、どんなに厳しく注意されても、心にしみることはありません。
③叱る理由を理解させる
大きな声で、悪い行為を制止させれば良いというものではありません。(危険な行為などはとりあえず、止めさせる必要はあります)何が、どのようにいけないのか、子どもが理解するように諭し、分からせることが大切です。感情的に、叱る言葉を並べられると、お母さんの勢いに負けて、子どもは行為を止め、謝るかもしれません。しかし、何がいけなくて叱られているのか理解しなければ、同じ行為を繰り返します。
④叱るのは一度
子どもにとっても、叱られることは気持ちの良いことではありません。叱られた後の態度がどのようなものであっても(その子の性格や年齢により、反応は違います)、納得のいくことであれば、親から叱られたことは心に残っています。口に出さなくても、改めようと思います。しかし、その注意が長時間に及ぶと、叱られたことだけが心に残り、なんで叱られたのか薄れてきます。また、時間を経て繰り返し、同じことで叱られると、「親の小言(文句)」と感じるようになります。メリハリのついた、インパクトの強い叱り方が効果的です。
⑤一貫性をもった叱り方
いつも同じ尺度で叱ることが大切です。同じ間違った行為をしても、日によって叱り方が違うと、子どもは、親の都合や感情の起伏を見抜きます。そのようなことが繰り返されると、言い逃れをするようになったり、親の顔色を見るような子どもに育ってしまいます。また、同じ間違った行為をしても、両親の間で「叱る」、「叱らない」の共通認識がなく、一貫性を欠いてしまうと、叱った内容が、子どもの心には届かず、間違いを繰り返す子どもに育ちます。もちろん、父親が厳しく叱った後に、母親が子どもの気持ちのアフターケアをすること(その逆も)は大切です。しかし、それは叱られたこと自体を否定してフォローするのではなく、なぜ叱られたのか、これからどのようにしていけばよいのか、などを諭すようにフォローするようにします。一方の親が厳しく叱ったあとで、さらに、被せるように、もう一方の親が厳しく叱ることは逆効果です。両親、あるいは家族の「間違った行為」に対する共通認識(我が家の規範意識)と、一貫性をもった叱り方が、子どの社会性を育てます。
⑥親の責任で叱る
最近、「叱る責任を他人に押し付ける」親が多いと聞きます。例えば、電車の中などで母親が騒ぐ我が子に「そんなことをしたら、おじちゃんに怒られるよ」などの注意の仕方です。おじちゃんは叱りません。叱るのは親の責任です。我が子のために叱るのです。きっと、そのお母さんは「そんなことをしたら、おじちゃんに迷惑でしょ」と言いたいのだと思いますが、無意識のうちに、厳しく叱る母親像をさけているのかもしれません。「優しいお母さん(お父さん)」と「叱れないお母さん(お父さん)」は違います。「宿題していかなかったら先生に怒られるよ。」と言っていませんか。もちろん先生は注意をしますが、勉強は先生のためではなく、子どもが自分の学力をつけるためにするのです。
⑦叱った後のケア
「感情的に叱ってしまう」と、お話されるお母さんに、たくさん出会いました。「感情的に叱ってしまう」ことに気付いているお母さんは、後で反省をされているお母さんです。私は、親が感情的に叱ることがあっても良いと思っています。子どもが、危険な行為や、迷惑をかける行為をした場合、感情的に叱ることで、子どもに親の本気度が伝わります。「母親が涙を流しながら叱ってくれた」「父親がいつもとは違う真剣な顔つきで叱ってくれた」そのような、思い出が一つや二つあるのも、子どもにとって良いものです。きっと、叱られたときの記憶は生涯、その子の生き方に影響を与えると思います。ただし、厳しく叱ったあとや、感情的に叱ったあとは、子どもの様子を観察すること(気兼ねして様子を伺うことではなく)が大切です。子どもが、どのように受け止め、どのように次の行動に移そうと思っているのか、あるいは納得がいかずに、不満をもっているのか。少しでも良い方向に向かおうとしているときは、褒めるようにします。また。不満を持っているなと感じたら、今度は感情的にならずに、じっくりと子どもの話を聞いてやることで、子どもの本心が見えてきます。感情的に叱られているときは、子どもは言いたいことも言えていない場合も少なくありません。感情的に叱るのも良いと言いましたが、子どもは悪くないのに、親が感情を抑えられずに、子どもにぶつけてしまうことは虐待になります。これは絶対に避けてください。親が思っている以上に、親から受けた子どもの心の傷は生涯残ります。
⑧子どもの人格を否定しない、行為を叱る。
叱るときは、「何が、どのようにいけないのか」子どもの間違った行為を、理解させることが重要です。ついつい感情的になったり、繰り返し叱るうちに、子どもの人格を否定するような言葉をかけてしまうことがあります。「おまえは性格が悪い」など、子どもは人格を否定されても、どうしようもありません。もちろん間違った行いを直すこともできません。「ぼくはダメな人間なんだ」などと、心に傷を残すことにもなります。
(2)子どもに合う叱り方
子どもによって違う叱り方をすることも大切です。 同じ家族の兄弟姉妹でも、性別も違えば年齢も違います。さらに、一人一人違った個性(性格)を持っています。家族内の規範の基準は同じでなければなりませんが、それぞれの年齢や性別、性格にあった叱り方をしていく必要があります。そのためには、日ごろから子どもの言動をよく観察して、どんような叱り方が効果的なのかを把握しておくことが大切です。
タイプ別叱り方
➀ワンパクタイプ
天真爛漫で、あまり考えずに、すぐに行動に移すワンパクな子どもは、自分自身が危険な目にあったり、周りの人(友達)を危険な目に合わすことがあります。まず、厳しい言葉で、行為を制止する必要があります。そのあと、何がどのようにいけなかったのかを諭します。
②チャレンジタイプ
どんなことにも興味を示し、自分からどんどん挑戦していくチャレンジタイプの子どもは、時として周りが見えなくなり、迷惑行為や危険行為に至ることがあります。自分がやりたいことでも、他人に迷惑がかかることや、危険なことは、ワンパクタイプと同じように、まず、行為を制止し、何が迷惑なのか、何が危険なのかを、理解させることが重要です。
③優等生タイプ
ワンパクタイプやチャレンジタイプの子どもと違い、周りをよく見て判断し行動します。ですから、人に迷惑になる行為や危険な行為はあまりしません。それよりも、無意識に、上から目線で言葉を発するなど、発言などで注意を促すことが多くなります。特に、このタイプの子どもは感情的な叱り方は逆効果です。何が言いたかったのか、どんなことを思って発言したのか、子どもの話をしっかり聞いて、間違いを正していくことが求められます。
④引っ込み思案タイプ
何事にも慎重(臆病)で、なかなか行動に移せない子どもが、親から注意をうけるような行為を行ったのは、何か大きな理由があると考えられます。このようなタイプの子どもは厳しい口調で叱ると、その後、口を閉ざしてしまうこともあります。子どもの思いを受け止め、ネガティブにならない助言が必要です。勇気づけるような叱り方が有効です。
※タイプ分けは「子どもの『わがまま』で困ったときの言葉がけ(PHP研究出版)」を参考にしました
〈つぶやき〉のコーナー 「たかがオリンピック、されどオリンピック」
コロナの流行等で、賛否両論の中、始まった「2020東京オリンピック・パラリンピック」も終わろうとしています。メダルを獲得した選手の喜びの声、残念な結果に終わった選手の涙など、たくさんの場面を見ましたが、共通して口にしていたのが「大会関係者への感謝の気持ち」でした。また、「大会まで苦しかった」という言葉も多く耳にしました。選手全員が精神面、肉体面などで極限の努力をしてきたのでしょう。努力の成果が報われても、報われなくても、選手にとって結果を出す場面があったことはよかったと感じた人も多かったのではないでしょうか。
選手たちにとったら「メダル」を取れたかどうかで、発言が大きく違っていました。とくに日本の選手たちは、国民の期待を背負い頑張りました。3位でメダルを取れた選手と4位でメダルを逃した選手の違いは、見ていてかわいそうになるぐらいでした。マスコミも「本日のメダルの数」と言って、メダル獲得を煽ります。4位でも8位入賞でも、予選落ちでも、選手は力一杯頑張ったのですから、胸を張ってオリンピックを終えることができるように、国民が応援していきたいですね。もう一度、クーベルタン男爵の「オリンピックは、勝つことではなく参加することに意義がある」の精神を思い出しましょう。
私自身は、人生で2回も自国開催のオリンピック・パラリンピックを見ることができたこと、感動を与えてもらえたことで感謝の気持ちで一杯です。選手の皆さんの今後の人生がより良いものになることを願っています。
上席顧問 津田克彦
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