上席顧問津田克彦先生のブログ
ブログ第9回「小学校時代に子どもはどのように成長していくのか」
2022/02/03 公開
2022/06/03 update
令和4年を迎えました。オミクロン株も猛威を振るい、まだまだコロナの流行は続きそうです。子ども達の教育にも影響を与えています。行事や集団での活動が制限され2020年度からスタートした新カリキュラムもなかなか進まないようです。
さて、前回までは、小学校就学準備としての内容でお話をしてきましたが、今回からは新たに、子育て中の保護者の皆様に少しでもお役に立つような内容を選んでお話しておきたいと思います。
小学校6年間の子どもの成長(変化)は人生の中でも最も大きいと言えるでしょう。小学校に入学していた子ども達はまだまだ幼児の雰囲気を残しています。その子どもたちが6年後の卒業時には思春期に足を踏み入れています。子ども達は6年間で幼児期から思春期前期までの成長を見せます。(もちろん個人差はありますが)そのように心身が成長していく子ども達への対応が同じであっては困ります。子どもの成長に沿って変えていく保護者の対応力が問われます。そこで、今回は小学校時代に子ども達はどのように成長していくのか、についてお話したいと思います。
子どもの成長への対応力を
小学校は6歳で入学してきて、12歳で卒業していきます。すなわち子どもの幼児期から思春期前期までの成長を目の当たりにすることができます。小学校教員は幼児の教育にも思春期の子どもの教育にも長けている必要があります。この6年間の成長は、その子の将来の方向性を形づけるものです。保護者の、この6年間の子どもへの関わり方も、子どもの成長にとって、とても重要なものとなります。
➀低学年(幼児期後期)
まだまだ大人(親や先生など)の保護が必要な時期です。この時期の育ちが小学校生活の基盤を築きます。どのような小学校生活を送るのか、どのような学習習慣が身につくのか、大人の助言のもとで育っていきます。とは言え、少しずつ親子分離の準備も必要です。すべてが大人の判断で行動するのではなく、簡単なことから自分で判断する習慣も身につけていきたい時期でもあります。不十分な言語表現ではあっても、大人はしっかり子どもの考えを聞いてやることが大切です。この時期こそ、しっかり、子どもの目を見て会話をすることを心掛けたいものです。さらに、子どもと一緒に活動することで、親子間のコミュニケーションも確立していき、子どもにとって家庭が「安全基地」であると思えるのです。
②中学年(ギャング・エイジと呼ばれる時期)
ギャングエイジと呼ばれる時期で、友だちとの仲間意識が芽生え始めます。いままで家族の絆だけが、人間関係だった子どもが、初めて家族以外の友だちとの関係性に魅力を感じ、家族から離れた社会で独り立ちを始めます。その関係性は、大人から見れば、まだまだ未熟なものですが、そこで学ぶ人間関係は子どもの将来にとって、とても重要なものです。大人は、介入しすぎず、しっかり見守る気持ちが大切です。ときには、友だちとの関係を大切にして、親に口答えをしたり、反抗的な態度をとることもあるでしょう。それは自我の成長の証なのです。友だちとの関係性が深まると同時に、いろいろな面で実力差が目立ち始めます。いわゆる命令者と服従者の関係が生まれるのもこの時期です。子どもは、心の中で悩みを抱える場合もあります。そんなとき、親がそっと寄り添ってやることで、子どもは成長していきます。また、学習面においても自立のスタートです。親のリードだけで学習するのではなく、少しずつ子ども自身が自主的に学ぶ姿勢を身につけていくことが大切です。ただし、この時期は子どもの成長に差が出るときでもあります。もう思春期に入りかける成長の早い子もいれば、まだまだ幼さを残す子どももいます。我が子の成長の度合いを確かめながら、我が子にあった見守り方をしていきたいものです。
③高学年(思春期前期)
仲間との関係性がますます、密になっていきます。この時期は大人への反発も強くなり、「友だちとの関係が一番」と思う時期です。その分、友だちとの関係は複雑になり、個人対個人やグループ間のトラブルも多くなります。しかし、この時期の子どもは、その悩みを大人に話したり、助けも求めることはあまりしません。我が子が、どのような学校生活(子どもにとっては社会生活)を過ごしているのか、情報量が少ない中でも、悩みに気づく大人が必要です。そのためには日ごろから、子どもの様子をよく観察しておくことが大切です。また、この時期を迎える前に、低中学年から、どんなことでも話し合える親子関係を築いておくことも大切です。
成長の早い子どもなら、性への芽生えも始まります。性への興味関心や不安は個人差があり、また男女差も大きく違います。学校でも、全体的な指導はありますが、個人の悩みまでは、なかなか把握できません。性の問題は、大人からもアプローチしにくいものです。だからこそ、普段から「なんでも話せる」という雰囲気を家庭の中で築いておくことが親の役目です。
④保護と促進
小学校の6年間は、親子の関係性(保護と促進)が大きく変わる時期です。1年生はまだまだ、親の保護が必要な時期です。そして、6年生は子ども自ら決断し、行動できるように促進していく時期です。6年の間に親子の関係性が変わる(成長する)ことが求められます。そのためには親が、子どもの成長を判断し、どう自立させていくか、しっかり抱きしめていた子どもを、いつ、どのように地面に降ろし、一人で歩ませるのか、親子分離のタイミングや方法は、この6年間の最も重要な親の役目と言っても過言ではないでしょう。極端な過保護や過干渉、放棄や放置にならないよう気を付けながら、我が子の成長に沿った、ゆとりのある子育てを目指したいものです。
〈つぶやき〉のコーナー「勢い」
松山英樹のソニーオープンでの逆転優勝をテレビで観ました。松山英樹は昨年マスターズでも優勝しています。いまの、松山選手には勢いが感じられます。昨年の大谷翔平にも勢いがありました。幕下から復活した照ノ富士は一気に横綱まで上り詰めました。他にもたくさん勢いを感じるスポーツ選手がいます。オリンピックのメダリストなども勢いのあった選手です。スポーツ選手には、競技生活の中で勢いのある時期があり、その時期を上手に活用できる選手と、残念ながらチャンスをつかめなかった選手をたくさん見てきました。その差はメンタルの強さだと言う人もいます。もちろん「運」も大きく影響するでしょう。
スポーツに限らず、人の成長には「勢いのある時期(伸びる時期)」があるように思います。人それぞれに違った「伸びる時期」があります。子どもの場合は心身の成長が大きな要因と言えます。時期が来ていない子に、無理な運動や勉強を与えても期待した結果には結びつかないでしょう。伸びる時期を迎えている子は適切な指導で大きく伸びていきます。「伸びる時期」を見極めてやることも、大人(保護者や指導者)の役目ではないでしょうか。
上席顧問 津田克彦
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