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上席顧問津田克彦先生のブログ

ブログ第10回「幼児期のウソ」

上席顧問 津田克彦

上席顧問 津田克彦

2022/03/31 公開

2022/06/03 update

 子どもも3歳を過ぎると、自分の伝えたいことが、片言ながら少しずつ伝えられるようになってきます。自分の思いと現実が違ったり、頭の中で考えた(空想?)ことを、口にして大人を笑わせてくれることも多くなります。また、少しずつ知恵もついてきて、大人が聞くと、すぐにバレてしまうような、ウソを平気でつきはじめます。今回は「幼児期から小学生のウソ」についてお話したいと思います。

 幼児から小学校低学年までの時期を「ウソ期」と呼ぶ学者もいます。3歳ごろから、子どもは知恵がつきはじめ、小さいながらも自主性が芽生えはじめます。我が子が、生まれて初めてついたウソを覚えていますか。きっと微笑ましいウソだったと思います。幼稚園・保育園に通うと、そのウソは、自我の芽生えと共に、少しずつ成長していきます。思いつきのウソから、その場を逃れるためのウソや、何か物をねだるときのウソなど、ウソをついた方が得だろうと考えたものになってきます。子どもなりに「褒められたい」「叱られたくない」という気持ちが育ってきます。小学校に入学するころには、さらに巧妙なウソがつけるようになります。「自分を高く評価してほしい」「嫌なことはしたくない」や「欲しいものを手に入れたい」などという気持ちからのウソです。ウソは思春期、青年期を経て、大人がつくウソに繋がっていきます。

幼児期のウソ

 幼児のウソにもいろいろな理由が考えられます。たとえば、「していない」のに「した」と答えるような、その場逃れのためのウソです。おもらしをしてしまったのに、「していない」と言ってみたり、頼まれたお手伝いをしていないのに「した」と言ったりするウソで、いま「叱られる」という場面を回避するためのウソです。

 自分をよく見せたい、悪く思われたくないときにウソをつく場合もあります。何かを失敗したり、上手くできなかったとき、周囲の人にわかってもらう、言い訳のためのウソです。同じように悪事を隠すためのウソもあります。悪事と言っても幼児のことですから、悪意がない場合が多いですが、友だちの持ち物がほしくて、つい奪ったしまった場合などに「ぼくはしらない」などと言います。他にも、ウソをつく理由や場面がたくさんありますが、ほとんどが、思いつきのたわいもない、すぐにばれてしまうウソです。

幼児のウソの対処法

 幼児のウソは、知恵や自主性の育ちの証です。幼児なりの、生きていくため(家族や園の友だち、先生方と上手くやっていく)の手段なのです。「負けたくない」「傷つきたくない」などという自尊心、プライドを守るための手段でもあります。ですから、親は目くじらをたてることなく、心にゆとりをもって対応していく気持ちが必要です。幼児がウソをつき出すということは、自己主張が出来るようになってきたからです。

 もちろんウソをつくことはいけないことです。幼児のウソの内容を見極めて、「ついてはいけないウソ(他人に迷惑をかける、他人を傷つけるなど)」の場合は、しっかり叱り、自己弁護のためのウソなどの場合は、ウソの内容を正し、「お母さん(お父さん)にウソをついてもバレてるよ」とわからせることが大切です。この時期のすべてのウソに対して、厳しく叱りすぎると、ウソをつくのではなく、正直に言わない子どもに育ってしまう心配があります。

 幼児のウソは、成長するにつれて、巧妙になっていきます。小学生になると、親が見抜けないようなウソをつこうとします。幼児期に「ウソはバレる」と知って育った子どもは、小学生になっても、恐る恐るウソをつくので、ウソをつく様子でわかりますが、幼児期に「ウソをついても大丈夫(バレない、叱られない)」と感じて育った子どもは、親にバレないように平気でウソがつけるようになってしまいます。「ウソをついても、お父さん、お母さんにバレる」と分かって成長していくことが大切です。そのためには、子どもとの様子を普段からしっかりと観察しておく必要があります。会話の場面では、子どもと目を合わせて話を聞きましょう。親がスマホ片手に、「ハイハイ」と返事をしてしまうことが習慣化すると、適当に話をしたり、平気でウソをつける子どもに育ってしまいます。

小学生のウソ 「必要なウソと悪質なウソ」

 子どもにとって、小学校は「小さな社会(生活の場)」です。「友だちと上手くやっていきたい」「友だちに好かれたい」など、学級という小さな社会でも懸命に生きようとしています。

 低学年では、友だちに、自分の考えや思いを直接ぶつけてけんかになることも多く、また無意識に友だちを傷つけてしまうような発言も多々あります。しかし、3年生ぐらいになってくると「相手を傷つけたくない」「相手によく思われたい」と言う気持ちから、ウソをつくという術を身につけていきます。特に「相手を思いやるウソ」は、社会で生活していくための必要なウソです。この術を身につけていけない子どもは、高学年で人間関係に苦労するようになります。大人社会に出ても「空気が読めない」「コミュニケーション能力が不足」などと言われるようになってしまいます。

 一方、小学校中学年あたりから、「相手を騙す」「相手を傷つけようとする」悪質なウソもつくようになってきます。はじめは、「自分を守るため」に、大人(親や先生)に、すぐにバレるウソをつくことがあります。テストの点数が悪かったとき、親に「まだ、返してもらっていない。」先生が言っていないのに「先生が宿題はしなくてもいいと言った。」などの類のものです。友だちとのことでも、自分が欲しいものがあるとき「○○君も買ってもらってる。」などと平気でウソが言えるように成長していきます。この時期に、親は「わが子はウソをつくはずがない」と信用し過ぎず、「ひょっとしたらウソでごまかす知恵がついたのかも」と思う気持ちが大切です。子どもの様子から判断し、先生や友達に確認できるものは確認して、もしウソをついているのなら「ウソをついてもダメ(バレる)」と悟らせておくことが、高学年から中高生に進みにつれて巧妙になるウソを見抜けることに繋がっていきます。

 そして、絶対についてはいけないウソがあります。それは「相手を傷つける」ウソです。中学年のギャングエイジ時代を過ぎ、高学年の思秋期前半に入ってくると、友だち関係が複雑になってきます。グループを形成し、関係性を優位に保とうとしたり、友だちとの1対1の関係でも優劣を争うこともあります。そんなとき、子どもは平気で「相手を傷つけるウソ」をつきます。最近では直接相手に伝えるのではなく、SNSなどを通じて、匿名で相手を傷つけたり、ひどい場合は、たくさんの友だちにウソの情報を拡散させることもあります。もちろん、ごく一部の子どもですが、傷つけられる子どもも、傷つける子どもも大人が守って(育てて)やらなければなりません。携帯電話やネット環境の発達で、子どもの言動が把握しにくい現在、大人が「子どもの言動からウソを見向く」力をついていく必要を感じます。

 

〈つぶやき〉のコーナー「年と共に変わるもの」

 教職を退き、NHKの「朝の連続ドラマ」を見ることができるようになりました。いま、放映されているドラマでは「あんこ」がよく出てきます。おはぎになったり、回転焼きになったりして。私は、若いころから甘い物が好きです。現役時代は甘い物の中でもチョコレートやケーキ類が好きでした。しかし、最近ではあずきの方が好きになってきました。洋菓子から和菓子に変化したようです。家族に言わせると「年のせい」だそうです。

 そこで、この年になって変わったものを考えてみました。確かに味覚は変わってきたかもしれません。味の濃いものや油っこいものは避けるようになっています(味覚というより胃が受け付けなくなったのかも)。

 もう一つ、はっきりと変わったものが、読む小説や、見たい映画・ドラマの内容です。若かった時のように、スリルのあるものや展開の激しいものから、ホンワカしたものを好むようになってきました。以前、北野武氏が番組で「70歳を超えると、スポーツをリアルタイムで見るより、録画しておいて結果を知ってから見た方が安心して見ることができる」と話していましたが、今はその気持ちがよくわかります。応援しているチームや選手が負けてしまうのを見たくないのです。もっとたくさん「年と共に変わってきたもの」があると思います。しかし、性格は幾つになっても変わりません。「年と共に丸くなる」と言われますが、それは表面的なもの(行動がついていけないため)で、内面は少し変わりません。年を取ると「良い人になる」なんて期待しないでください!

 

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上席顧問 津田克彦

上席顧問 津田克彦

元私立小学校校長、元大阪府私立小学校連合会会長。 プラチナム学習会では保護者相談、進学指導、及び、「小学校受験対策集団コース」を担当。元私立小学校校長の長年の経験を活かした、噂に左右されない本質的な指導で万全の準備を進めます。特に小学校入学後に後伸びできる子ども達の指導に努めています。

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