上席顧問津田克彦先生のブログ
ブログ第11回「子どもの積極性・自主性」
2022/06/09 公開
2023/08/22 update
小学校で元気に、いきいきと学校生活を送る子どもの様子を見ていると、何事に対しても積極的に取り組む姿勢が育っている子が多いです。自主性や積極性は、学生時代、そして社会人になっても評価される要因の一つです。何にでも積極的に取り組める子と、そうでない子の違いは、性格の違いによるものも大きいと思います。おとなしい子、慎重な子、心配性な子、臆病な子などのお母さんと面談をしていると、必ずお話に出てくるのが「参観日では手も挙げないし発言もしません。もう少し、積極的になってくれたら」ということです。しかし、子どもは、考えているし、答えも分かっている場合が多いのです。ただ、人前で発言する勇気がないのです。確かに性格によるところが大きいのですが、幼児期の育ちによって、その子なりに自主的、積極的に取り組むことができるようになってきます。今回は、積極性、自主性についてお話をしたいと思います。
自主性・積極性の育ちを阻む要因は
➀過保護、過干渉
3歳ころから、子どもは自立心が育ち始めます。少しずつ、自分でできるようになることが、うれしくて仕方ないのです。自己主張もするようになってきます。ところが、大人から見れば、不安がいっぱいで、黙って見ていられない状態です。ほとんどの試みが失敗、1つのことに時間もかかってしまいます。親が先に指示を出し、親の言うことを聞く子に、(無理やり)育てた方が、子どもは上手く成長するし、時間短縮もできて、一見良い育ちのように感じたり、見えたりします。性格が素直でおとなしい子どもほど、抵抗もなく受け入れます。「うちの子はやり易い子で良かった」と感じるかもしれません。子どもにしても、親が決めてくれたことをした方が、叱られることもなく、何かを決定しなければならない場面でも悩む必要もありません。そのうちに、親の指示を待つ子に育ちます。そのまま、小学生になると、今度は先生の指示を待つ子になります。学校でも「やり易いお子さんですね」と言われます。しかし、それは、「自ら進んで取り組む、積極性のあるやり易い子」ではないのです。幼児期から失敗を繰り返しても、自分でする楽しさを知る子どもに育てたいものです。とは言っても、放任するのとは違います。自主性が育つためには、失敗を暖かく見守り、安心して次に進めるような環境(親の存在)が必要です。
➁自己肯定感の不足
日本の中高生は世界の国々の中高生より自己肯定感が圧倒的に低いという調査結果が出ています。また、自分の親を評価(満足)しているか、という質問に対しても、日本の中高生の評価は低い(評価していると答えたのは25%)と言われています。そこには、日本の親子関係が大きく影響していると考えらます。日本の教育にも問題があるのかもしれません。
自己肯定感は褒められて育つと言われています。一時(今も?)「褒めて育てる」という言葉をよく耳にしました。「褒められる」ことで「自分は信頼されている」という自己肯定感に繋がるのです。しかし、誰に褒められても自己肯定感に繋がるわけではありません。子どもにとって信頼できる人に褒められてこそ、自己肯定感が育つのです。子どもにとって一番近くにいる大人が親です。一番褒めてほしい人も親です。親との関係が成熟しているはずの中高校生の親に対する評価が低いのはなぜでしょう。日本の親は子どもが小さいころから一生懸命子育てをしています。一生懸命なだけに、親の考えが優先されていることが多いのではないでしょうか。「子どもはこうあるべきだ!」という既成概念に影響されたり、「周りの子に負けさせたくない」と、成長の度合いを無視して、無理な目標を掲げたりしていないでしょうか。また、自分(親)の夢やプライドを子どもに託してしまうようなことはありませんか。幼児から小学校低学年ころまでは、子どもは親の言うことが絶対です。ですから、素直に親の言葉を受け入れて、「自分はこうあるべきだ」「自分が親の言うことを聞けば、親は喜ぶ」と考えます。しかし、思春期に入ると、大人(親だけではなく先生なども)の言葉の裏にある気持ちがわかるようになってきます。本当に自分のことを考えてくれているのか、本当に自分のことを信頼してくれているのか。本当に自分の盾になってくれるのか。例えば児童二人が万引き事件を起こしたとします。学校に連絡が入った場合、教員が現場に向かうことになりますが、保護者に連絡をしたところ、ある保護者は「学校に任せます」と同行を断り、もう一方の保護者は「私も一緒に謝ります」と同行し、子どもと一緒に頭を下げて謝ったとき、子どもの目には、心には、どのように映るでしょう。自分の行いのために親が頭を下げて謝る姿を見た子どもは二度と、悪いことはしてはいけないと思うのではないでしょうか。そして、自分は親に守ってもらっていると感じるでしょう。
自主性・積極性を育てるには
幼児期から子どもの表情を観察し、思いをくみ取り、目を合わせて子どもの話を聞き、顔を見て話す。これが、子どもを安心させ、信頼感を生み、そして、そんな親に褒めてもらうことで「自分は愛されている、信頼されている」という自己肯定感に繋がります。
親子の信頼関係を築くための子育てには、「叱り方、褒め方」も重要なポイントとなってきます。幼児期の子どもは、どのような叱り方をしても、素直に聞き入れますが、小学校に入学するころには、叱られた内容がわかるようになってきます。叱るのは「行為(したこと)」であって、「人格を否定する」ような叱り方では反発する気持ちも育ってきます。また感情的な叱り方や、一貫性のない叱り方では子どもの心に響きません。成長のための失敗を厳しく叱るのではなく、「なぜダメなのか」「次はどうすればよいのか」をわからせるような叱り方が大切です。そのように叱られた子どもは「次、がんばろう」という気持ちが芽生え、さらに「次のがんばり」を褒めてもらうことで、自分の行動に自信を持ち、自主性・積極性に繋がっていきます。ただし、社会性に反する行為は、一貫して厳しく叱ることが大切です。
自主的・積極的に行動する子どもに育てる方法の一つとして生活リズムを整えること、生活のルーテインを作り上げていくことをお勧めしています。幼児期は親の保護の下で過ごします。しかし、子ども達も小学生ころには、自分のことは自分でできるようになってきます。学校から帰ったら、まず何をするのか、夕飯までに何を済ましておくのか、入浴後はどう過ごすのか、何時に就寝するのか、など生活に関する一日(帰宅後)のルーテインを決めておくことで、親に聞かなくても、動けるようになってきます。最初はなかなか守れないかもしれませんが、親が根気強く、つき合うことが大切です。もちろん、時と場合によって臨機応変に対応していかなければなりませんが、「時間がない」という親の焦りや、親の都合で「今日はこっちを先に」というように日々変えたのでは身に着きません。ルーテインを身に着けて、自主的に動けけるようになるためには、親もルーテインを守るという強い気持ちが必要です。生活のルーテインがある程度確立してきたら、そのルーテインの中に学習を入れていきます。宿題はいつ、どこでするのか、自主学習は?、読書は?もちろん、子どもが望む遊びの時間も必要です。ルーテインは子どもと相談して決め、変更する場合でも子どもの意見を聞いて変更することで、ルーテインへの責任感も育ってきます。小学校からではなく、幼児期からでも、簡単な生活のルーテインは始められます。子どもが分かりやすい、取り組みやすいことを紙に書いて壁に貼ることから始めてみましょう。
〈つぶやき〉のコーナー「祝日の思い」
今年のゴールデンウイークは10連休の人もいたようです。コロナの流行がなければ、海外旅行にも行ける日数です。最近では、休みの日を工夫して連休がたくさん取れるようになってきました。私が子どもの頃は、祝日は日にちが固定されていて「飛び石連休」などの言葉もあったぐらいです。確かに休みの日を流動的(一部)にすることで、連休が増え、旅行や日数を必要とする活動はしやすくなりました。反面、流動的になったために、「今年の〇〇の日はいつだった?」というふうに祝日の持つ意味や祝う気持ちが薄れてきているようにも感じます。せめて成人の日(以前は1月15日)や敬老の日(以前は9月15日)ぐらいは固定したほうが祝う気分が盛り上がるのではと考えるのは年を取った証拠かもしれませんね。
成人の日や敬老の日以外にも、祝日ではありませんが、次のような日もあるようです。
家族でお祝いしてみたらどうですか?
1月31日 愛妻の日 4月10日 兄弟の日 5月 8日 母の日
6月19日 父の日 7月24日 親子の日 10月16日 孫の日
11月20日 家族の日 11月22日 夫婦の日
上席顧問 津田克彦
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